「ふぁーあ」
午前7時。
カーテンの隙間からさしこむ光りに目を細めながら、大きくあくびをする。
「……っと、そういや、マルチは昨日から長瀬のおっさんとこに泊まりだったっけか」
泊まりというかメンテナンス中なのだが。
というわけで、愛妻がいないので――
「朝メシは自分で作らなきゃいかんのか……」
そう呟きつつ大きく伸びをしてから、体を――
「……んあ?」
起こせない。
「体が重い……、風邪か?」
「それはいかんにゃ」
「……と思ったが、俺の上に葵ちゃんが正座してたら、そりゃ起きれんわな」
「んに?」
「どいてくれ」
「はいにゃ」
ぴょこんと、その物体が床に飛び降りる。
「……で」
体を起こした浩之が、床に座って顔を洗っている猫っぽい女の子を見る。
「いくつか質問があるんだが」
「なんですにゃ?」
「なぜ小さいか?」
「せりかしゃんから小さくなるお薬をいただいたんですにゃ」
「なぜ猫か?」
「猫はお嫌いですにゃ?」
「その猫耳はなんだ?」
「オプションにゃ」
そこまで聞いて、浩之は大きく溜息をつく。
「つまり、マルチがいない間、身の回りの世話をしようとして来てくれたわけだ」
「なんでいままでの問答でわかるのか謎ですが、まあそんな感じで」
「ちゃんとしゃべれるじゃねーか」
「まあそんな感じにゃ」
「言いなおすなよ……」
さらに溜息。
「うーにゃ」
「どこへ行く?」
「あさごはんのしたく」
「ああそうか。……ってちょっと待て」
「んにゃ?」
首根っこを掴まれ、葵がちょっと不機嫌そうな顔で振り向く。
「そのポケットのふくらみはなんだ?」
「えらんでかるかんねこまっしぐら」
「ちなみに俺の朝メシは?」
「マグロ味」
「帰れ」
「んにゃ〜ん」
「擦り寄ってもダメ」
足に擦り寄ってくる葵を引っぺがし、廊下に放り出す。
「寒いにゃ」
「そりゃ寒いだろーな」
「しくしくしく」
「だからって泣く事はないだろーが」
廊下でさめざめと泣いている葵を呆れたような目で見下ろし、3度目の溜息。
と――
「寒いときは運動にゃ」
いきなりがばっと立ち上がり、浩之を見上げる。
「あん?」
「しぇんぱい、おもてにでるにゃ」
「いや、俺はメシ作るから、葵ちゃんひとりで運動すればっていうか帰……」
どごん!
「でるにゃ?」
「……はい」
風穴の空いたドアを見ながら、浩之は力なく呟いた。
で――
「もう勘弁してください……」
ボロゾーキン状態で庭に這いつくばっている浩之が哀願する。
が――
「ダメにゃ〜。わたちのぶろーくんはーとはまだまだ癒えないのにゃ〜。朝ご飯つくれなかったしー。帰れとか言われるしー。廊下は寒いしー。……ふんだりけったりにゃ、えぐえぐえぐ」
言いながら思い出し泣きをしつつ、起きあがりかけている浩之の懐にもぐりこみ――
づどむ。
ボディに一発。
「ぐはぁ!」
悶絶する浩之。
「しぇんぱい、体がなまってるにゃ。いい機会だから鍛えなおしてあげますにゃ」
「い、いえ、結構です……」
「遠慮しなくていいですにゃ〜」
なんとか声を絞り出した浩之に、葵の無情な台詞が突き刺さる。
そして――
この特訓(?)は、およそ2時間、葵が疲れてお昼寝してしまうまで続いたのだった。
あとがき
えー、最近iモードページばっかりで本業(?)をおろそかにしていたのと、冬コミの原稿も終わったということで、ひさしぶりにSSを書いてみました。
しかもちびマルチ抜きで。
いちおうモデルはうちの同人誌「突撃〜3」のちび葵ですが、話自体に繋がりはありません。浩之が、まるで薬のことを知っていたかのように平然と葵が小さくなった事実を受け止めているように見えるのは気のせいです(笑)。
あの「突撃〜3」の問題児、葵にゃんをもうちょっと掘り下げてみようと思って書いてみたんですが、全然掘り下がってませんね(苦笑)。結局ただのワガママなお子様になってしまったような気がします。
まあそんな感じで。
……評判が良かったらシリーズ化しちゃおうかな(爆)