「うぐぅ」
「お前はどんな時でもうぐぅなんだな」
「うぐぅ…、そんなことないもん」
おかしいなぁ。
どうしてこうなっちゃったんだろう…。
いつものように祐一くんと商店街を歩いて、たい焼きを食べて、それから……。
「いやー、すっかり迷っちゃったな」
「楽しそうに言わないで…」
「もう真っ暗だなー」
「うぐぅ」
そう、もうずいぶん前に日が暮れて、あたりは真っ暗。
しかも道に迷っちゃって、今は街灯もない路地を二人で歩いてる。
祐一くんはボクが怖がりなのを知ってて、そしてボクは真っ暗なのが怖くて…。
だから……。
「ほらあゆ、あの茂みの形、おばけみたいだぞ?」
「うぐぅ…」
さっきからずっとボクをからかうんだ。
「なああゆ……、?」
怖くて、その場にうずくまりそうになる体をなんとか動かして、祐一くんの後をついていく。
もう話してる余裕なんかないよ…。もし祐一くんとはぐれちゃったら――それが一番怖くて、もうそれしか考えられなくて……。
「もう、やだよぉ……」
涙が滲んでくる。
ダメだよ…、泣いたりしたら、また祐一くんにからかわれちゃう…。
どんっ!
「きゃっ!」
「なーに女の子みたいな声出してんだよ」
「ボク、女の子だもん」
いつのまにか祐一くんが立ち止まったらしくて、ボクはその背中にぶつかってしまった。
「…祐一くん? ……あ」
「ったく、怖がりなくせに意地張りやがって」
祐一くんはそう言って、ボクの手を握って…、ぎゅっと握ってくれて…。
「ほら、これで怖くないだろ?」
「…うん。…えへへ、あったかいね」
「ミトンつけてるくせに、何言うか」
あ、祐一くん、視線逸らした。照れてるんだ、かわいい。
「なにニヤニヤしてんだよ、行くぞ」
「うん!」
祐一くんがボクの手を握ってくれる。たったそれだけなのに、嬉しくて、でもちょっと恥ずかしくて…。
真っ暗な道はやっぱり怖いけど、でも、祐一君の手のぬくもりが、ボクを優しく包んでくれるから、だから…。
「祐一くん」
「なんだ?」
「ボクの手、ずっと握っててね」
「おう、離せって言われても離さないからな」
「うん、…ありがとう」
だから、ずっと、握っててください。ボクが迷子にならないように。これからずっと、祐一くんと同じ道を歩いていけるように…。
ボクの4つめのお願い。
もう人形のお願いは全部使ってしまって、だからボクは今ここにいるのだけれど、これは、祐一くんとボクが二人でかなえる、二人だけのお願いだから。二人の気持ちがあればかなうことだから。
だから、ずっと握っていてください。
ボクもずっと握り返します。
ボクをあったかくしてくれる、大好きなひとの手を。
あとがき
初めて、コメディでなく、シリアス…っていうか甘めのSSを書いたような気がします。
いかがでしたでしょうか? もし評判が良ければ、iモード版はシリアス(たまに甘)なSSで通しますが。
まあなんとなく作ったiモード版SSページなので、なんとなく消える可能性も無きにしもあらずんば虎子を得ず(謎)