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2万ヒット記念SS
「鶴来屋ちびマルチ 2日目」
その1


「おはようございまーす」
「おはよう」
「……おはようございます」
「ほい、おはよう。あ、初音、運ぶの手伝って」
「は〜い」
 柏木家の朝。
 いつもどおり、千鶴、楓、初音の3人が、寝ぼけまなこで居間に集まり、そこに梓が出来立ての朝ご飯を運んでくる。
「おはよーございまちゅ」
「おはようございます」
 そこに、いつも通りでない2人がやってくる。
 メイドロボのセリオと、子供型メイドロボのマルチだ。
 本来なら料理もメイドロボの仕事なのだが、セリオはホテルでの仕事のためにレンタルしているということで、基本的に家での仕事はしないことになっているのだ。
 そしてマルチは……、昨日のミートせんべいで、『料理禁止』ということになってしまっていた。
「おいしいおいしいって食べてたくせに……」
 マルチがぶつくさ言いながら食卓につき、セリオが少し離れたところに腰を下ろす。
 ちなみに子供型メイドロボには、食物からエネルギーを分解・吸収する機能がついている。子供は元気にご飯を食べるべきだという開発者の考えによるものだ。
 そんなわけで――
 がつがつ。
 むしゃむしゃ。
 もぐもぐ。
「ふごぅあっ!」
「はい、お水」
 ごきゅごきゅ。
「ふう、ごちそうさまでちた」
 初音が差し出したコップの水を一気に飲み干してから、両手を合わせる。
「よし、耕一なみにイイ食いっぷりだったぜ、マルチ」
「どういたちまちて。……こういち?」
「千鶴姉は今日も会社か?」
「ええ、今日はちょっと遅くなると思うわ」
「そうか、あたしは部活だから――」
「あ、私、図書館に行かないと……」
「うん、じゃあ、わたしはマルチちゃんと一緒にお留守番してるね」
「あい、おるすばんでち。……で、こういちとは? ……ってヲイ!」
 悩みつづけるマルチを置き去りにし、家に残る初音が食器を洗いに台所へ、そして他の3人も、出かける支度をするために部屋へと戻っていってしまった。
「ほったらかしでちか? ……ひどいでちぃ」
 1人置き去りにされたマルチが、居間のすみでうずくまっていた。

 数分後――

「じゃあ、いってくるわね」
「いってらっしゃーい!」
 姉3人+セリオを見送り、初音は家の中に入っていった。
「マルチちゃ―ん!」
「あい?」
 うずくまっているのにも飽きたのか、そこいらをへろへろと歩いていたマルチが、気の抜けた返事をしつつ初音のほうへ歩いてきた。
「あ、マルチちゃん、あのね……」
「神経衰弱ならお断りでちよ。きのうこてんぱんに負けまちたからね。これ以上負けると、最新型こんぴゅーたを搭載しているメイドロボとしてのプライドが……」
「そうじゃなくて」
「あい?」
「おそうじ、しよ?」
「おそうじでちか? それならどんとこいでち」
「そう? じゃ、掃除道具持ってくるね」

 しばらくして、初音が2人分のホウキと雑巾を持ってきた。
「はい、マルチちゃんの分」
「ほへ?」
「……どしたの?」
「モップとバケツはどこでちか?」
「……えーと、うちのお掃除は、ホウキと雑巾なんだけど……」
 マルチの言葉に、なにか言い知れぬ不安を感じつつも、初音は努めて冷静に、マルチにホウキと雑巾を手渡した。
「そうなんでちか……、まあいいでち。では、お掃除開始ぃ〜!!」

「ぐはぁ!」
 どしゃ。
 雑巾に足を取られ、すっ転ぶ。
「ぬあっ!?」
 びりっ!
 ホウキの柄が障子に突き刺さる。
「えーと」
 その様子を、初音がぼーぜんと眺めていた。
「とおっ!」
 どんがらがっしゃん!!
 なぜかホウキでテーブルをひっくり返す。
「くそっ、これしきのことでっ!」
「あ、あの、マルチちゃん? もういいから……」
「いいえっ! めーどろぼのぷらいどにかけて、絶対に奇麗にしてみせるでち!」
 がっしゃーん!!
 ぼきっ! べきっ!
 ぐしゃっ!!
「………誰か助けてー」
 暴れ狂うマルチを見ながら、初音はそう呟きつつ涙を流していた。

「………なんだ? 家の中がやけに騒がしいような……、ひょっとして取りこみ中かな? ……やっぱり、驚かそうとか考えずに、連絡入れとくべきだったかなぁ……」
 柏木家の門の前で、1人の青年が、家の中から聞こえてくる騒音(破壊音なのだが)を聞きつつ、なにやら考え込んでいた。


 あとがき

 はい、マルチのお掃除プログラムには、モップ使用時のデータしか入っていませんでしたというお話でした。
「マジでちか?」
 マジです。
 さて、1年と3ヶ月ぶりの鶴ちびですが、いかがでしたでしょうか?
 前回が料理だったんで、今回は掃除にしてみたんですが……、掃除だけは大得意だったはずのマルチですが、どういう運命のいたずらか、こういう結末になってしまいました。
 このままマルチは何も出来ないダメダメロボットになってしまうのか? 助けを呼ぶ初音の声は誰かに届くのか? 都合よく現れた青年はいったい誰なのか?(バレバレですが)
 というわけで、まて次回!!

「……次はいつでちか?」
 ……3万hitのときだから、このペースで行くと、2002年1月頃(ぉ 


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