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sister
「おはよ」
「あ、おはよう、お姉ちゃん」
栞がICUから一般病棟に移った日、わたしは、朝一番でお見舞いに行った。
わたしが病室に入ると、すでに目を覚まして上半身を起こしていた妹が、満面の笑顔で迎えてくれる。
「元気そうじゃない」
そう言いながら、持ってきた花を花瓶に移す。
「うん、でも、まだぜんぜん力が入らないのがちょっと」
「贅沢言わない。だからリハビリするんでしょ?」
誕生日まで生きられないと言われた妹。
でも、誕生日から1週間が過ぎた今、栞はこうしてわたしの目の前にいる。
お医者さんは、奇跡だと言っていた。
わたしも、そう思う。
けど、ちょっと違う。
この奇跡は、栞と、あの人が起こしたものだと、二人の絆があったからこそ起こったのだと、わたしはそう思っている。
「お姉ちゃん」
「なに?」
「……ありがとう」
「わたしは何もしてないわよ」
そう、わたしは何もしていない。
わたしは、栞の運命を受け入れられず、別れを恐れ、この子から、現実から逃げていた。
「してなくない」
栞にしては珍しく強い口調で、そう言いきる。
「だって、お姉ちゃん、泣いてた」
「……え?」
「『あの子、なんのために生まれて来たの』って、わたしのために泣いてくれた、って、祐一さんが言ってた」
「……あのバカ」
「だから、ありがとう、お姉ちゃん」
「……どういたしまして」
溜息混じりにそう言い、そして、頼まれていた本をテーブルの上に置き、水差しの水を入れ替え、着替えを渡す。
一通りの用事を済またとき、ふと、あることを思い出して、栞の方を向く。
「そうだ、栞」
「なに?」
「誕生日」
「たんじょうび?」
「誕生日プレゼント、なにがいい?」
「えっと……」
唇に人差し指を当て、しばらく考え込む。
そして、なにか思いついたようで、私の方をぱっと見上げる。
「祐一さんに会いたい」
「却下」
「わ、即答…」
「それだけはダメよ」
「そんなこと言うお姉ちゃん、嫌いです」
「嫌われようとどうしようと、病み上がりアンド薬の副作用でげっそりやせ細った妹なんて、恥ずかしくて相沢くんに見せられません」
「わ、ひどい」
「ちゃんと栄養を取って、元通りかわいい栞に戻ってから、好きなだけ会いなさい」
「……かわいい?」
……しまった、うかつなことを…
「かわいい……、……えへへ」
枕を抱きしめてニヤニヤと笑っている栞。
「い、いいから、はやく元気になりなさい」
「あ、お姉ちゃん、照れてる?」
「じゃ、じゃあ、わたしは学校に行って来るからね!」
「いってらっしゃーい」
まだニヤニヤしている栞の視線を背中に感じながら、わたしは病室を出た。
あの日以来、相沢くんは学校を休んでいる。
だから、まだ栞のことは話していない。
名雪に伝えてもらおうかとも思ったけど、出来れば自分で伝えたい。栞を支えてくれたお礼を言いたい。
でも、会った時、わたしがどうなるか。ちゃんと伝えられるのか、そういう不安もあったから、まだ迷っていた。
だから、これは全くのイレギュラー。
「香里……」
「相沢…くん?」
今の時間は午前10時。
本来なら、通学路で出会うはずはない。
でも、会ってしまった。
そして、考えるよりも先に、わたしは相沢くんに抱きついてしまった。
「香里!?」
「あい…ざわ……く………」
涙があふれる。
栞の大事な人。栞の想いを受け止め、そして、おそらくわたしなんかよりももっと悲しい思いをしたであろう人。
でも――
ごめんね。残酷かもしれないけど、やっぱりまだ言えない。
言ったら、きっとあなたは、栞に会いにいってしまう。
でも、今のげっそりと痩せた栞には会わせたくない。
姉のワガママかもしれないけど、わたしのかわいい妹には、最高にかわいい状態で、相沢くんと再開させてあげたいから。
「香里……、元気出せ。俺もがんばるから」
相沢くんが、わたしを抱きしめる。
「相沢くん……」
ごめんね、あの子が元気になるまで、もうちょっとの間だけ、わたしの涙を誤解しててね。
それと、ごめんね栞。お姉ちゃん、ちょっと役得。
あとがき
ええと、この香里姉さん、非道い奴ですか?
と、いきなり質問で始まりましたが、いかがでしたでしょうか? 香里姉さんです。
栞エンディングの中庭での再会シーンが、どうみても栞生還後初な感じを受けたんで、栞が学校に行けるぐらいに回復するまで祐一に会わなかった(会えなかった)のはなんでなんだと思ってたんです。
んでこれを書いてみたんですが、考えてみると、栞は死んだんだと勘違いしている祐一が、ゲームのエンディングのようにいきなり中庭で栞と出会ったら、あんなに冷静ではいられないですよね(苦笑)
まあ香里姉さんの好感度が高いと、こういうことになるかもということで(そんなパラメータはありません)
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