「ジュライヘルムよ、私は帰ってきたぁっ!!」
「うるさい!」
叫んでいるミサをバトンで小突き、サミーは皇(すめらぎ)の塔へと入っていった。
「おじゃましまーす」
「おジャ魔しまーす」
夏休みのある日、自由研究を兼ねてジュライヘルムに遊びに来たサミーとミサだったのだが、そんな彼女たちを出迎えたのは――
「あー、いらっさい……」
暑さでダレまくっているジュライの魔法使いたちだった。
「な…なんなんすか、いったい」
ちょっとびっくりしたミサが、今にもとろけそうな魔法使いに近づいていく。
「水がね、出ないのよ」
「……ただのきれいな水?」
「いつもはね……」
ミサのボケを無視しつつ、その魔法使いが言うには、毎年、夏場は窓の外に常に水を流して、外のあったかい風がその水の幕を通って涼しい風になって入ってくるという、天然の冷房になっているらしい。
が、今年は何故か、水が流れないのだという。
屋上を調べようにも、上のほうの階に入れる権限を持った人間(要は津名魅たち)は、いまみんな出払っているらしい。
「……じゃ、調べてくるわ」
「行ってきまーす」
ひととおり話を聞いたサミーとミサは、おもむろに階段を上っていく。
「あの……私の話…聞いてました?」
魔法使いの控えめな声が、まとわりつくような湿気にかき消されていった。
「扉だわ」
階段を上りつづけたサミーとミサばぶち当たったのは、『神官以外立入禁止』と書かれた、でっかい扉だった。
「ふむ……ぶち壊すか」
と、ミサがしばらく考え込み……
「サミー、月、出てる?」
「出てるわけないでしょっ! 建物の中なんだから!」
「ふむ、窓もないしねん……、んじゃ、出して。月でも頭が満月のクリリン選手でもなんでもいいから出して」
「しょーがないなー。最近魎ちゃんから教わったばっかりだから、上手くいくかわかんないけど……」
そんなことを言いつつ、サミーは精神集中をはじめる。
「んーと……、プリティエネルギーボール!」
ぼむ!
サミーが手のひらを上に向けると、まばゆく光る光球が飛び出した。
「よいしょ、っと」
その光球を、ザトペック投法で5メートルはある天井の近くまで放り投げる。
「はじけてまざれっ!」
サミーが叫ぶと同じに、光球が弾け、空気中のケンミジンコと混ざって、さらにまばゆく光る光球へとデジモン超進化する。
「よっしゃー、ピクシィサテライトキャノンエネルギーチャージ!」
ミサが、その月っぽい光球から発せられる光を体に受け、なにやらガンダムしている。
「エネルギー充填80パーセントー!」
「あ、カギ開いてる」
がちゃ。
なにやら盛り上がっているミサを尻目に、サミーは扉を開け、屋上へと続いているであろう階段を昇りはじめた。
「さあ、屋上だわ!」
「え、えねるぎーじゅうてん175ぱーせんと……」
さっきからずっと後ろについてくる光球のせいで、エネルギー充填しまくっているミサが、それでもなにもできず、ただすんすんと泣いていた。
「えーと、あれが給水タンクよね、てことは……、あ、あった、あそこのパイプから水が流れるわけで………あ」
給水パイプを目で追っていたサミーは、ニュータイプ的になにか違和感を感じ、ガンタンク風なデザインの給水タンクの方に近寄って行く。
「なんか、ここだけ妙にいびつなのよね……」
こんこんとパイプの一部分を叩いてみる。
「他のところは……と」
かんかん。
「で、ここは……」
こんこん。
「やっぱり! ここになにか詰まってるんだ!!」
と、サミーはミサのほうを振り返り――
「ミサ! ここの詰まり物を取るから、下行って魔法ディバイディングドライバーを……って、ミサ?」
「ほー、そーかそーか、こいつのせいであたしはエネルギー充填237パーセントでぱっつんぱっつんになってるわけかい」
「ミ…ミサ? 目が危ないんですけど……」
「そーか、そーよね、もともとあたしの邪魔をしてドアを開けちゃった誰かさんのせいでもあるわけだし、ここであたしがキレても総帥は許してくれるわよね」
「ミサ……ちょっと……なに言ってるかわかんない……あ、いや、わかるようなわかりたくないような………」
「とゆーことで、1番、ピクシィミサ、もー抑えきれません。ちなみに348ぱーせんと」
「にょえーーーーーーーーーーっ!」
づどむ!
皇の塔崩壊。
それは、やっとの思いで友好関係を築いた地球とジュライヘルムとの間に、ちょっとやっかいな溝を生じさせた。
犯人がミサなだけに(笑)
あとがき
いや、久しぶりのサミーです。いかがでしたでしょうか……って、なんでFAKEのその3じゃないんでしょうね? 自分で言ってりゃ世話ないですが。
ちなみに、タイトル、全く関係ありません。ていうか、どういう意味なのかもわかってません(笑)。完全に言葉の響きだけで決めてます。和訳わかる方、教えてください。ヤバい意味だったらタイトル変えますんで(笑)
えと、日記にも書きましたが、なぜ今サミーのSSを書いたかというと、「DUAL」というアニメの影響です。要はシリーズ構成とキャラデザが、TV版サミーに関わってた人なわけで……、それ見てたら、なんかサミーが懐かしくなってきたんですよね。
で、今回これを書くに当たって、「零式〜」を読み返してみたんですが……いや、恥ずかしいですわ、昔の作品って。
ちびマルチとは結構作風とか文体とか違うような気がしたんで、気をつけて極力零式に似た文体になるようにしてみたんですけど……どうでしょ?
というわけで、彩月航、約1年3ヶ月ぶりのプリティサミーでした