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アユモンアドベンチャー

ACT1:純粋にメリケンサック

「さて、と。夕飯の買い物をしていかないと」
 妹の見舞いを終え、香里は駅へと歩いていく。
「もうすぐ、かな」
 順調に回復していく妹の様子に、香里の顔にも、徐々に笑顔が戻っていった。
 そんなある日の出来事。

「おねえちゃーん」
 がすっ!
「ううっ、いたい……」
「球根モドキを妹に持った覚えはないわ」
「そんなこと言うおねえちゃん、嫌いです」
 殴られたあたりを葉っぱで器用にさすりつつ、香里を見上げる。
「だから姉ではないとゆーに」
 そんな謎の生き物を、香里はため息をつきながら見下ろす。
 病院帰りに、突如として現れた謎の生き物。
 香里のことを『おねえちゃん』と呼ぶその顔は、妹の栞そっくりだった。
 だが、頭のてっぺんから生えた茎、その先にある2枚の葉っぱ。蔦と、短い3対の触手のような足。
 それを妹として認識できるほど、香里の脳みそは柔軟ではなかった。
「で、なんなのあんたは。みたところ人間じゃないみたいだけど」
 妹として認識してはいないが、その物体の存在を許容してはいる香里が、冷静に問う。
「わたし、シオモンっていいます。こうみえてもデジモンなんですよ」
「で?」
「え、えと、おともだちのアユモンちゃんに会いに来たんですけど、間違ってゲート通っちゃったみたいで、もうなにがなにやら」
「なんだ、迷子か」
「え?」
「あたしゃてっきり、地球侵略に来た異星人かと」
 心底残念そうに言い捨てる香里。
「なんですか、それ」
「そのまんまの意味だけど。ま、いいわ、迷子なら交番行きなさい。運がよければ教えてくれるわよ」
「運が悪いと?」
「掴まって研究所行き。そして解剖」
「わたしひとりでがんばろうとおもいます」
「そうね、それがいいわ」
「でもおねえちゃんが手伝ってくれるととても嬉しい」
「あんた、言ってることが滅茶苦茶だし、それ以前に姉じゃないってば」
「じー……」
「……う」
 シオモンに上目遣いで見つめられ、香里のハートは思いっきり揺さぶられた。
 自分におねだりするときの栞とダブるのだ。顔だけは。
「しょ、しょーがないわね」
「わぁい。おねえちゃんだいすきー」
 ごす。
「姉ではない」
「いたい……、メリケンサックは反則……」
 おでこにできたたんこぶを蔦でさすりながら、涙目で訴える。
「ああはいはい、で、どこにいるの? そのおともだちは」
「ここにいるよっ!」
「え?」
 突然後ろから聞こえてきた声に、香里はびっくりして振り向く。
「アユモンちゃん!」
「シオモンちゃん、おひさしぶりー」
「未確認生命体がまた一匹……」
「あ、かおりさんだー。こんにちはー」
「はねまんじゅうに知り合いはいないわ」
「うぐぅ、ひどいよかおりさん……。っと、それはさておき。シオモンちゃん、サーバ大陸が大変なんだよー!」
「え? そうなんですか?」
「うん、だからシオモンちゃんのちからが必要なんだ。一緒に来てくれる?」
「わたしでお役に立てるのなら」
「うん、立ちまくりだよ。じゃ、行こう!」
「はい!」
 と、アユモンの後ろにでっぱなしのゲートへと、一人と二匹は歩いていく。
「ちょ、ちょっと、なんであたしまで連れて行かれるのよ!」
「それは、かおりさんがえらばれしこども……こども?」
「いちおうまだ未成年だけど?」
「えらばれしこどもだからだよー」
 訂正。二匹は、シオモンの蔦でがんじがらめにした香里をひきずりながら、ゲートへと歩いていく。
「ちなみにきょひけんはないんだよー」
「世間ではそれは拉致っていうのよ! って、ちょ、ちょっと、し、栞〜!」
「呼んだ?」
「あんたじゃないっ!」
 ごすっ!
「いたい……」
「れっつらごー」
 マイペースなアユモンと、たんこぶが二つになったシオモン、そして珍しく取り乱す香里が、ゲートへと吸い込まれ――
 一路、デジタルワールドへ。


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