(注:ウサギの皿のイベントのネタバレが含まれてます)
「それで、今度の土曜なんですが……」
「土曜ですか? これまた急ですね……」
ある日の昼下がり、五月雨堂を訪れたみどりさんは、急に……なんていうか、その、……俺と旅行に行きたいと言い出した。
……それも泊まりでだ。
俺も平静を装ってはいるが、内心かなり動揺している。
「駄目ですか?」
「あ、いえ、ぜんぜんそんなことないです! いやマジで」
「そうですか?」
「ええ、俺自身は全然OKっていうか、すっごい嬉しいんですけど、でも、スフィーが……」
「大丈夫です、こっそり出ちゃえば」
いじわるっぽい笑みを浮かべ(こういうみどりさんも結構いい)、かなり大胆なことを言う。
「いや、そーゆー問題じゃなく……、って、みどりさん、今日ちょっと変ですよ?」
「……ろ」
「そうですか? でも、それもこれも、健太郎さんを思うあまり……」
「……たろ」
「そんな唐突な!」
「……んたろ」
「御迷惑ですか?」
「……けんたろ」
「そんなことないです! だって俺もみどりさんのことが……」
「けんたろーーーーーーーーーっ!!」
どすっ!
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「けんたろ、起きた?」
「はぁ、はぁ……、……俺、寝てた……のか?」
「けんたろ、疲れたから仮眠とるって言ってたじゃない」
「そう……だっけ?」
「そだよ」
「……そうだったな、思い出した。……思い出したから、スフィー」
「なに」
「どけ」
うつぶせに寝た状態のまま、俺の背中の上に乗っかっている(ていうか立っている)スフィーに言う。
「あ、そか、これじゃ起きれないよね」
ぴょこん、と、俺の背中からスフィーが飛び降りる。
「やれやれ……」
と、立ちあがり、スフィーを見下ろす。
子供の状態(ぶっちゃけた話、Lv1)だったからいいようなものの、うっかり大人だったりした日には……。
「あー! いまなんかすっごい失礼なこと考えてるでしょ!」
「考えてない考えてない。大人のスフィーに乗られたら、重さで背骨が折れてたなとかそんなことは一切考えてないぞ」
「む〜……」
触覚をぴこぴこ振るわせながら、俺を睨みつけるスフィー。
「で、なんだ? 俺に用があったんじゃないのか?」
今にもマジカルサンダーが出そうな雰囲気だったので、とりあえず話題をそらす。
「あ、そうそう、長瀬さんが来てるんだよ」
「長瀬さんが?」
話題をそらせたことに内心ほっとしつつ、スフィーに訊き返す。
「うん、けんたろに見てほしいものがあるんだって」
「俺に? なんだろ……」
「なんだろとけんたろって似てるね」
わけわからないことを言うスフィーと一緒に、眠い目をこすりながら店に向かう。
「それにしても……、夢か……、そうだよな、なんか変だと思ったんだ、みどりさんがあんなこと言うなんて……」
「なに? エッチな夢?」
ぺし。
「いたーい! けんたろがぶったー!!」
びーびー騒ぐスフィーを無視して、のれんをくぐり、店の中に入る。
「あ、長瀬さん、こんにちは」
そこには、風呂敷包みを抱えた長瀬さんがいた。
その大きさや形から察するに、小ぶりな壷かなにかだろうか。
「こんにちは。すみません、おやすみのところ」
「あ、気にしないで下さい。営業時間中ですし。それで、俺に見て欲しいものと言うのは……」
「ええ、これなんですが……、あ、ここに置いてもいいですか?」
「ええ」
と、長瀬さんはその風呂敷包みをテーブルの上に置き、広げた。
「これは……」
「壷です。かたち的には花瓶に近いですが」
風呂敷の中から出てきたのは、……なんて言うんだ? 顔の付いた丸底フラスコ(ただし土製)? いや、これは……
「くしゃみしたら魔王かなんかが出てきそうな壷ですね」
「は?」
「いえ、なんでもないです」
「はぁ。で、これがですね……」
くいくい。
と、不意に服の裾をひっぱられ、振り向くと、スフィーが真剣な顔で俺を見つめている。
「ん? どうした、スフィー?」
「けんたろ、この壷、なにかいるよ」
「……は?」
スフィーのその突拍子もない言葉に、思わず間抜けな声を上げてしまったが、長瀬さんはさして驚いた様子もなく――
「なるほど、そういうことでしたか」
ひとり納得していた。
「じゃあ、ひょっとして……」
「しかし、それでは……」
「んじゃ、こうすれば……」
あのー、なんか、俺の知らないところで話が進んでるんですけど……。
「じゃ、ちょっともったいないけど……」
と、スフィーが壷をつかんで高く掲げ、床に叩き付けようと――
「ちょっとまてー!!」
思わずスフィーの腕をつかむ。
「けんたろ?」
「何してんだお前!? ていうか危ないだろ……じゃなくて、散らかるから外で……って違う!」
「けんたろ、混乱してない?」
きょとんと俺を見上げるスフィー。
「いや、大丈夫だ。……アレだろ? その壷の中には何かがいるんだかあるんだかしてて、それを助けるんだか取り出すんだかしたいんだろ?」
「現実を認めたくないっていうけんたろの思いが、ひしひしと伝わるよ」
「ありがとう。で、それならひとつ試したいことがある」
「試したいこと、ですか?」
「ええ」
長瀬さんに短く返事してから、スフィーが出しっぱなしにしていたホウキを手に取る。
出しっぱなしにしていたことについては、後でみっちりお説教することにして――
とりあえず先っぽから1本抜き取り――
「スフィー、ごめんな」
「え? うわっ!」
スフィーの鼻に突っ込む。
「ちょっと、けんたろ、なにを……」
心の中で謝りつつ、スフィーの鼻をくすぐりつづける。
「ふぁ……」
よし、もう少しだ!
「ふぁ……ふぇ……ふぇ…………、ふぇっくしょん!!」
よっしゃ!(心の中でガッツポーズ)
「けんたろ! いきなりなにするの………って、ええっ!?」
ビンゴ!
スフィーのくしゃみと同時に、壷から煙のようなものが溢れ出してきた。
「なに、これ……」
そして、その煙がだんだんと人の姿をとり始め――
数秒後には――
「呼ばれて飛び出てぢゃぢゃぢゃぢゃぁ〜ん」
………………………。
……………………………。
…………………………………。
「…………なにしてんだ? ましろ」
「え? あ、いや、ちょっと……」
「ちょっと、じゃわかんねーって」
煙の中から現れたのは、いつぞやのウサギの皿の精(っていうのか?)の、ましろだった。
「いやその、暇だったから散歩してたら、うっかり壷の中に落っこっちゃって」
「……おまえ、キャラ変わってるぞ」
「そう? ……あ、いや、そうか?」
「今更取り繕っても遅いって」
「お馬鹿さんだなぁ。それで出てこれなくなっちゃったんだ」
「ひどいなぁスフィーちゃん。散歩でもしてくればって言ったのスフィーちゃんなのに」
「……は?」
思わず頭にクエスチョンマークを浮かべながら、スフィーを振り返る。
「あ、けんたろはしらないんだっけ? あたしたち、あれから時々おしゃべりしてたんだよ」
「……なるほど、ましろのこの豹変ぶりは、おまえの悪影響か」
「悪影響って……、かわいくなったでしょ? ましろ」
「いや、まあ、……うむ、なるほど」
確かに、言われてみれば、ましろのかわいい外見には、こういう明るい感じのほうが似合うかもしれない。
「でかした、スフィー」
「えへへー」
得意げに微笑むスフィーの頭をなでてやりながら、俺はまたましろのほうに向き直る。
と、ましろは長瀬さんとなにやら話していたが、やがてぺこっと頭を下げた。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたとか、まあそんな感じなのだろう。
「では、解決したようですし、わたしはこれで」
「あ、すみません、お茶も出さずに」
「いえ、お気になさらず。では、また」
「はい。今日はありがとうございました」
と、俺が店の外で長瀬さんを見送ってから、中に戻ると――
スフィーとましろが仲良くおしゃべりをはじめていた。
「あー、ましろ」
「はい?」
ましろが俺のほうを振り向く。
「暇だったら俺も話し相手になってやるから、いつでも出てきていいぞ」
「ありがとうございます」
やわらかな笑みを浮かべ(俺的には昔のましろより今のほうが断然いい)、そしてまた、スフィーとのお喋りに夢中になるましろを見ながら――
「なんか、スフィーが2人になったような感じだな」
漠然と、そんなようなことを考えていた。
「感じとかじゃなくて……」
数日後――
「よし、そこだ、まじかるさんだー!!」
「きゃー!!」
テレビの『お子魔女』に夢中になっている2人を見て、うんざりしながら呟く。
結局、ましろは、あれからほとんど毎日のように現れては、スフィーと遊んでいる。
「こりゃ、ホントにスフィー×2だな。ましろ、なんかだんだん幼児化してるし」
結局、同居人が1人増えたようなものか……、ま、いいか、ましろも手伝ってくれるし。
それになにより、友達が出来て、スフィーも楽しそうだし、な。
後日談――
「で、妹の黒ウサギの方はどうなってんだ?」
「あー、あの子なら、あたしが『お姉さんがましろなら、キミはまっくろくろすけだね』って言ったら、怒って出てこなくなっちゃった」
………なんじゃそら。
あとがき
「はい、案の定あたしの虜になったわたるが勢いで書き上げた、まじかる☆アンティークのSS『ともだちさん』、いかがでしたでしょーか?」
………………。
「そもそも、なに、このネタ、ハ○ション大魔王? いいのこんなんで?」
……………………。
「わたる?」
スフィー。
「なに?」
俺のことは、WATAROと呼んでくれ。
「………わたろ?」
そうそう。
「なんなんだか……。で、なに? このタイトル」
『ともだち』と『うさぎさん』をくっつけた。
「安直っていうかなんていうか……、それと、なぜましろ?」
なんとなく。
ってゆーか、話的に、壷の中からなにか出てこなきゃいけないわけで、さて何にしようかなと。
最初は長瀬つながりでセバスチャンでも出してやろーかと思ったんだけど、まあ、なんでもかんでも東鳩に頼るのはやめよーと。
「……せばすちゃん?」
ああ、気にしないでいい。
「そう? じゃ気にしないね。……で、ましろ、なんであんなに明るくなっちゃったわけ?」
ああいう喋り口調(ゲーム参照)書くの苦手だから。
「それだけ?」
マジでそれだけ。SS書きとして敗北宣言してるみたいでなんかヤだけど(苦笑)
ゲームのテキスト見ながらだと、たぶんなんとかなると思うけど、タダでさえ寝不足なのに今まじアン起動したら、大変なことになる。
「たいへんなこと?」
かっぱえびせん状態。
「なるほど」
で、ましろ好き(いるのか?)の人には申し訳ないけど、スフィーと仲がいいって感じを出すためにも、明るくしちゃえってことで。
まあそんな感じで。まだスフィーしかエンディング見てない状態で書いてますから、お互いの呼び方とか、冒頭のみどりさんとか、どこかしら違うところもあるかもしれませんが、もしお気づきの点があれば教えてください。こっそり修正します(笑)
「わたろ、ずっこい」
うるさい。
えー、こみパもKanonもときメモ2も跳び越して、いきなり書いてみたまじアンですが、気に入っていただけたら幸いです。
っていうか、編集時間140分ってなんなんだ?(ワードのプロパティ見てみた)
ちびマルチが半年に1本になりつつあるというのに、なんか猛烈なペースで書いてしまったようですが、まあかわいいスフィーのためですし。
「当然☆」
……なんか調子に乗ってるガキはほっといて、ではこの辺で。
「む〜」