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for you……


「『げんきですか……』……あかん他人行儀過ぎや」
 夕食後の自由時間、寮の自分の部屋に缶詰になったうちは、ひたすら便せんとにらめっこしていた。
 耕介くんへ――大好きな人への手紙を書くために。 
 ソングスクールに来てからもう六ヶ月。電話では何度か話したけど、手紙は初めて。
 てゆーか、電話で話しとるから、何書いたらええのか余計にわからんようなってくる。
「うーむ……」
 便せんの横に置いてあった、一緒に封筒に入れようと用意した写真を見る。
 フィアッセ、エレン、クレスビー、リーファ……、この一ヶ月で仲良うなった子たちと写した写真。……なぜか校長とイリアも写っとるけどそれはまあいいとして。
「どないしょー……」
 写真の中のフィアッセに問いかけるように呟き、ふと窓の外を見る。
「ええ天気や」
「夜やっちゅーねん」
 一人ボケツッコミで気を紛らわせてから机に向き直る。
「えと、『今日は晴れでした』……だからどーした、子供の絵日記かコラ」
 書きかけた便せんをくしゃっと丸めて放り投げる。
「……と、晴れかぁ」
 ふと、今日見た青空を思い浮かべる。
 あの青空は海鳴に続いてるんやね……
 うちの想いも届いてるやろか。
 耕介くんの想いは、うちはちゃんと受け止められてるんやろか。
 ………………。
「……あかん、せつなくなってもーた。フィー抱きしめてこよ」
 人肌が恋しくなったうちは、手紙を一時中断して、フィアッセの部屋へと向かうことにした。
 ……べつにえっちなことはせぇへんで? 抱っこするだけや。
「ん?」
 廊下に出た瞬間、さわやかな風を感じて立ち止まる。
 開けられた窓から入ってくる風――
 この風も、海鳴に届くんやろか……
 ……って、
「あかん、この窓北向きやんか。さすがに北風は方角的に無理や」
 でも、まあ……。
「君よ、優しい風になれ……」
 呟いたその言葉がフィアッセに向けたものなのか、耕介くんに向けたものなのか、うちにもようわからへんけど、まあ、どっちも大好きな人であることに変わりはないわけで。
 ……………。
 大好きな人、かぁ……。 
 ……耕介くん、うちはこっちでも、たくさん友達できたよ。特にフィアッセなんて、うちが男やったら駆け落ちしたいくらいかわええねん。……でも、でもな、耕介くんのかわりは、おらへんねん。そこだけ、ぽっかり穴が空いてんねん。……会いたいなぁ。
 …………………………。
「会いたいよ……」

 風は、遙か彼方へ――
 for you――


 あとがき

 はい、6月1日、ゆうひさんのお誕生日記念のSSです。
 お誕生日記念のわりにはせつないお話になってますが……
 ソングスクールからさざなみの耕介くんへ初めて送る手紙。何を書こうか悩むゆうひ……を書きたかったんですが、この女、ちょっと油断すると漫才モードに移行しようとするんで要注意です(笑)
 ちなみに時間軸とかそのへんは、エース桃組に載っていた外伝マンガ(ビジュアルファンブックにも載ってますね)にある程度合わせてあります。
 まあそんなこんなで、ひさしぶりのとらハSSでしたー。

 


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